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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

拙著:山田博文『<第2版>99%のための経済学入門』(大月書店、2016年7月、236ページ、1900円)のご紹介


  第2版への序文

 幸いなことに、本書の第2版が上梓されることになった。2012年9月の初版以来、本書で取りあげ、検討してきた諸問題がますます顕在化してきたからであろうか。
 実際のところ、今日では72億人の世界人口のわずか1%の富裕層の保有する金融資産が、残りの99%の人々の保有する金融資産と同額になるなど、貧富の格差が拡大している。1%対99%の貧困格差の構造は、いまやはっきりとデータで示され、世界の大企業・富裕層・首脳たちの課税逃れを報じる「パナマ文書」の衝撃波が1%を震撼させている。99%のための経済社会をめざす本書が主張する世界はその対極にある。
 時代の流れに沿ったのか、本書はネット上の経済学入門書部門の販売でトップ100位に入りつづけ、何度か1位にもなった。現代の経済社会は、戦後史的というよりも、数世紀にまたがる激動と転換の時代に入ったようだ。そのような事態に、多くの方々が関心を示し、理解するうえで、本書が幾ばくかお役に立てれば、著者としては幸甚である。
 第2版では、データを更新し、異次元金融緩和政策とアベノミクス、武器輸出と経済の軍事化、ウォール街の動向や再興するアジア経済圏、メディアの話題をさらった若者たちの社会運動などの新しい問題も取りあげ、メスを入れる改訂作業を行った。さらに末尾には、新しく「補章 経済学の古典から現代資本主義を読む」を追加し、最先端の金融経済現象を『資本論』などの古典から読み解く視点を提供した。
 ただ、初版の「はじめに」と「あとがき」は、本書を上梓することになった目的と動機を示しており、かつその意義もいまだ有効であると判断したので、そのまま掲載することにした。読者のご賢察を期待する。

  はじめにー1%のための経済学から99%のための経済学へ

 ニューヨークの金融街・ウォール街では、2011年9月頃から、貧富の格差に抗議する若者たちの集会やデモがつづいた。手にするプラカードは、「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」、「われわれは99%だ(We are the 99%)」とアピールする。
 2008年9月の「リーマン・ショック」後のアメリカでは、家を失い、職を失った無数の国民がいる一方で、政府の公的資金の援助を受け、数十億円のボーナスを手にする経営トップなどの富裕層がいる。こうした不公平を、若者たちは「1%vs.99%」の対立と表現したのだった。
 ふり返って、経済成長のために走りつづけた日本社会は、そこに生きる99%の人々に、豊かでゆとりのある生活をもたらしただろうか。私たちは、ドイツの人たちよりも年に3ヶ月間(500時間)も多く働くことで、世界第2位の経済大国になり、世界最大の貿易黒字国となり、対外資産大国になった。
 だが、その成果として豊かな生活と安心して暮らせる社会がやってきたとはいいがたい。むしろ、不安定雇用、生活不安、貧困と所得格差は拡大し、生活苦などから自ら命を絶つ人が年間3万人に達する。経済成長のための電力を供給してきた原発は、取り返しのつかない事故を起こし、「安全神話」は崩壊した。なぜこんな社会になってしまったのだろうか。
 そうこうするうち、第2位の経済大国の地位は、2010年、アジアの隣国である中国にバトンタッチされた。国内では、天文学的な財政赤字を抱え、公的サービスは低下し、若者の働く場所も、中高年の老後の生活にも、暗雲が立ちこめる。99%の人々が苦労を強いられているのは、アメリカだけではない。
 日本を代表する大企業や金融機関は、バブル崩壊後の厳しい経済状況下でも、「リストラ」によって人件費を押さえ込み、特別減税や公的資金にサポートされることで、世界ランキングの上位に駆け上がり、350兆円を超える内部留保金を保有する。株式投資に精を出す富裕層は証券減税と巨額の配当金の恩恵に浴している。企業も、個人も、1%への富の集中が進み、残りの99%の中小零細企業や個人との貧困・格差は拡大する一方だ。
 経済のグローバル化で、海外進出した企業は、国内の失業者数300万人を大幅に上回る550万人の現地労働者を雇用している。かりに、海外進出した企業が帰国し、同数の労働者を国内で雇用するなら、失業問題は解消し、労働力不足すら問題になるだろう。
 市場原理主義的な金融経済を主導したアメリカと、そのアメリカに追随した日本で、2009年に新しい政権があいついで誕生した。だが、この新政権のもとで、従来の経済社会システムが改革され、豊かでゆとりのあるシステムが整備されつつあるとはいいがたい。
 となると、こうした課題は、ふたたび主権者である私たち99%に向けられる。私たちが経済社会のできごとやしくみの真相を知り、その問題点を発見し、地道にできる範囲でその改革に踏み出すなら、遠回りのようでも、結局、大きな力を発揮するにちがいない。歴史を書き換えてきたのは99%の総意だからだ。
 経済学は、本来、「経世済民」(「世の中を治め、人民の苦しみを救うこと。経国済民。」『広辞苑(第6版)』)の学問である。けっして市場経済や企業経営の学問でなく、まして相場の予測やカネもうけのための、1%の「勝ち組」になるための学問ではない。「経済学を学ぶのは、経済学者にだまされないためだ」との警句への自戒と「経世済民の学」のルネサンスを願い、本書は書かれている。
 ともあれ、私たち99%が、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」(教育基本法第1条)であることを自覚し、国民主権の担い手として、自分の国の経済や社会の仕組みを知り、その運営に影響力をもつようになるなら、「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)は、まちがいなく実現する。
 本書が、そのような課題にアプローチするうえで、いくばくかの助けになれば、幸甚である。」ーー拙著『第2版:99%のための経済学入門ーマネーがわかれば社会が見えるー』(大月書店、2016年7月、「はじめに」)より。
 なお、本書は、Amason の経済学入門のベストセラーのランキングで1位となりました。

目 次

第2版への序文

はじめにー1%のための経済学から99%のための経済学へ

Chapter1. 経済学って、なに?

Chapter 2. なんのために働くのか?

Chapter 3. グローバル化は何を変えたのか?

Chapter 4. 好況・不況はなぜ生まれるのか?

Chapter 5. 日本の経済成長とはなんだったのか?

Chapter 6. 経済大国日本で、なぜ貧困と格差が拡大するのか?

Chapter 7. 「金融」は世の中を豊かにしたのか?

Chapter 8. 日本の財政は破綻するのか?

Chapter 9. アメリカと日本の経済は一体なのか?

Chapter 10. ウォール街はなぜ破綻したのか?

Chapter 11. 戦争は経済と関係するのか?

Chapter 12. 日本は東アジアで孤立するのか?

Chapter 13. 私たちはどんな経済社会をめざすのか?

補 章  経済学の古典から現代資本主義を読む


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