I TOP I site policy I contact I 印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

26. ウォール街の金融危機と世界大不況

1.はじめに

 いま、世界に衝撃が走っている。金融中心地アメリカのウォール街で、大手金融機関がつぎつぎに破 綻しているからである。世界の金融機関は狼狽し、経営者達は、売れ行き不振と株価の暴落に頭を抱えている。欧米では、従業員の大量解雇といった事態も発生 している。世界中が金融混乱に巻きこまれ、やってきつつある大きな不況の影におびえている。
 世界の首脳達は鳩首協議に走り、サミットを開催しても、内部での意見の対立を克服できず、効果的 な政策が打ち出せないでいる。それは、ほぼ1世紀にわたって続いてきたアメリカを頂点にした世界体制・パックスアメリカーナ時代の終わりのはじまり、とも いえる歴史的な地殻変動を示しているようである。
 いま、世界で何が起こっているのか、これから世界経済はどうなっていくのだろうか、21世紀の入口で、わたしたちは、のっぴきならない事態に直面しているようだ。

2.国際金融センターの機能麻痺

 周知のように、アメリカのニューヨーク・マンハッタン地区・ウォール街は、世界中の巨大金融機関 の集積地になっている。そこは、ドルとアメリカ中心に組み立てられた戦後の国際金融システムにおいて、世界中のマネーが集中し、さまざまな金融取引が展開 される国際金融センターとして機能してきた。ウォール街は、いわば世界のマネーの心臓部にほかならない。今回、その心臓部で、金融機関の経営破綻が広がっ ている。
 ウォール街の金融機関は、世界中からマネーを集め、さまざまな金融商品や取引手法に組み替えて運 用し、気の遠くなるような巨額の利益を手にしてきた。ちなみに、今回破綻した全米第4位の大手証券会社リーマン・ブラザーズのファルド最高経営責任者 (CEO)は、2000年以降、4億8000万ドル(約500億円)もの高額の報酬を受け取っていた。アメリカ議会の公聴会では、彼がフロリダに1億 4000万ドル(約150億円)の別荘などを保有していることなども取りあげられた。公聴会の出席議員のあいだでは、「ウォール(金融)街の幹部は利益を 私有するが、損失は国民に押しつける」との批判が続出した。
 今回の金融危機が、過去のさまざま危機と違っているのは、戦後の国際金融センター・ウォール街の金融ビジネスが破綻し、世界のマネーの心臓部で機能麻痺が起こっていること、その影響が世界大不況をもたらしつつあることである。
 アメリカでは、この1年間で、まず、銀行では、破綻に瀕したワコビアが151億ドル(1兆 5800億円)で、ウェルズ・ファーゴに買収された。また業務停止となった貯蓄貸付組合大手のワシントン・ミューチュアルは、JPモルガン・チェースに買 収された。買収するサイドの巨大銀行も、シティグループは、アブダビ投資庁から出資を受け入れることになったし、そもそも銀行全体が、金融救済法による公 的資金(全体でほぼ75兆円)で、政府から不良債権を買い取ってもらわないと破綻しかねないほどの経営危機に陥っている。
 証券会社となると、さらに深刻で、壊滅状態にある。まず、山一証券を買収し日本でも有名になった 全米第2位の巨大証券会社メリルリンチは、バンク・オブ・アメリカに救済合併された。5位のベアー・スターンズも、JPモルガン・チェースに救済合併され た。あのライブドアに買収資金を提供していた4位のリーマン・ブラザーズは、破綻してしまった。政権が替わっても絶えず時の政府の財務長官を出し続けてい る世界最大の証券会社ゴールドマン・サックスは、公的資金で救済してもらうために銀行に転換した。2位のモルガン・スタンレーも、同じ理由で銀行への転換 を図った。
 保険会社では、子会社アリコなどを売却しはじめた保険大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)は、中央銀行のFRBからほぼ15兆円の融資を受けても追いつかず、政府からほぼ4兆円の公的支援(資本注入)を受けた。
 こうした事態は、アメリカ型金融モデルが破綻したことを意味している。周知のように、わが国は、 1990年代後半以降、貯蓄よりも投資を優先するアメリカ型金融モデルをめざして金融ビッグバンを強行してきたので、早晩、金融モデルの再見直しに着手せ ざるを得なくなるであろう。
これほど深刻な大手金融機関の破綻と再編成は、戦後60数年のうちではじめてのことであり、 1930年代の世界大不況の再来を暗示している。戦後、世界のさまざまな金融ニーズに対応し、かつ金融商品や取引手法自体を提供してきた国際金融センター は、機能麻痺の状態にある。その影響は広範囲かつ深刻であり、アメリカ国内だけでなく世界各国の経済へも波及している。

3.巨大投機市場—住宅バブルと証券化商品

 ウォール街の金融危機の直接のきっかけは、2007年夏頃から表面化したアメリカの住宅市場をめぐるサブプライムローン(信用力の低い層への略奪的な変動金利型住宅ローン)問題である。
 住宅バブルが進行し、住宅を持てない層が増大していたなかで、アメリカ国内に流入する世界のマ ネーに新しいビジネスチャンスを提供しようとする金融機関は、住宅市場をターゲットにした新しいビジネスに着手した。住宅ローンを担保にした証券化商品 (MBS=Mortgage Backed Securities, CDO=Collateralized Debt Obligations )を組成し、それを販売するビジネスである。これは、ローンが焦げ付かないうちに、証券にして販売し、広く投資家にリスクを転嫁する仕組みでもあった。
 最初の3〜5年は低金利で誘い込んで住宅ローンを組ませ、その後は2倍もの高金利に変動する略奪 的なローンのため、遅延や返済不能に陥る事態が広がった。そのようなアメリカの住宅市場の問題なのに、その影響が世界中に及ぶことになったのは、住宅ロー ンを証券に組成し、その証券化された金融商品(MBSやCDO)が世界中に販売されたからであった。住宅バブルの崩壊で、MBSやCDOの価格が暴落し、 その推計損失額は、IMFによれば、2008年4月段階で、ほぼ1兆4000億ドル(150兆円)に達した。
 ウォール街の金融機関は、新しいビジネスのフィールドを自分たちで創り出し、莫大な利益を手中にしてきた。世界中のさまざまなリスクこそ、自分たちの新しいビジネスチャンスであり、リスクがない場合には、自らリスクを創り出してきた。
 こうしたビジネス展開の背景には、資本主義経済にとって不可避の過剰マネー(資本)の存在があ る。利益の追求が最優先される資本主義経済にあっては、社会や貧しい国からどんな金融ニーズがあっても、そこに利益が期待されなければ、マネーは投資され ない。人類のほぼ40%にあたる25億人の人々が1日2ドル未満の生活(世界銀行「世界開発指標(WDI)2007」)を余儀なくされていても、過剰なマ ネーは、そのような国や人々には向かわず、利益を生み出す機会を求めて世界中を徘徊する。マネーが入り込んだ市場は、価格が異常に膨張する。株式バブル、 不動産バブル、ITバブル、住宅バブル、原油バブル、などさまざまなバブル市場の膨張と崩壊が繰り返され、経済を混乱に陥れてきた。
 投資機会がなければ、金融機関は、自ら投資機会を作り出してきた。投資(インベストメント)機会 というよりも、むしろ、金利や価格の変動に利益を見いだす投機(スペキュレーション)のための機会を創り出してきた、といってよい。投機(スペキュレー ション)とは、新しい富は何も生み出さず、もっぱら金利や価格の変動を利用して、自分たちに有利に富を配分させる寄生的・不朽的な経済行為である。各種の ローン、リース、不動産などを担保にして新しく組成される証券化商品は、アメリカとドルを中心にした世界の過剰マネーに、ハイリスク・ハイリターン型の新 しい大規模の投機的なビジネスチャンスを提供してきた。
 バブル経済の膨張と破裂が繰り返されたのは、新自由主義的な規制緩和と投機的なビジネスチャンス を優先したアメリカ・イギリス・日本であり、その結果、国民経済と国民生活は多大なリスクにさらされた。だが、市場原理と新自由主義に距離を置き、公的な 規制を緩和しなかったドイツ・フランスでは、バブル経済は発生していない。

4.アメリカ型金融モデルの台頭と崩壊

 アメリカ型金融モデルの特徴は、「銀行よさようなら、証券よこんにちは」というキャッチフレーズ に象徴される。つまり、預金の受入と貸出といった伝統的な銀行業務にともなう金利収入よりも、資産管理や企業の合併買収(M&A)、さまざまな金 融商品の開発、投資、売買にともなう手数料収入などの非金利収入を最優先する金融ビジネスである。実際、アメリカの大手金融機関の利益構成は、7〜8割が 非金利収入によって占められている。
 アメリカ型金融モデルが広がれば広がるほど、物づくりから離れて、より効率的にマネーを運用することが最優先される。人間の生存にとって不可欠の衣食住に関連した物づくりや製造業とは乖離して、マネーが一人歩きをするようになる。
 マネーが自由に飛び回れるように、各種の規制を緩和し、国境すらなくす。旧ソ連の崩壊と中国の市 場経済の導入によって、経済取引上の国境の壁はなくなり、市場経済の原理で世界の経済活動が行われるようになった。そのことは、マネーの地球的な規模での 運動と拡大した世界市場の分割合戦に拍車をかけた。