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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

49. 2017年の経済潮流を読み解く



  

官製バブルと貧困格差の拡大

 アベノミクスの「第1の矢」を担った異次元金融緩和政策は、4年弱たった現在も「2%の物価上昇目標」を達成できず(これは国民生活にとって朗報)、「デフレ脱却と経済成長の実現」どころか、アベノミクス不況を誘発しています。
 ことごとく破綻しているのに、それでもなお、「2%の物価上昇目標」が掲げられ、それを達成するための異次元金融緩和政策は今後も継続すると宣言しています。その本当のネライは、どこにあるのでしょうか。
 それは、第1に、実体経済が低成長であっても、日銀にジャブジャブのマネーを供給させ、株式・国債・都心の不動産などの価格をつり上げ、官製バブルを発生させることで、株式・国債・不動産市場から値上がり益などの金融利得を実現してやること、第2に、安倍政権にとって、手っ取り早く「株高」という「景気回復」を演出し、この株高演出が、憲法改悪まで政権を維持させる経済的バックボーンになっているからでしょう。
 「株価連動政権」「株価依存内閣」といわれる安倍政権の面目躍如といえる政策が、日銀や年金積立金といった公的マネーによる株価対策です。
 実体経済はわずか0・6%しか成長してないのに、株価だけ200%も吊り上げておくため、安倍政権は、2つのことをやりました。
 1つは、日本銀行のマネーを株式市場に流入させ、株価を吊り上げることです。日銀が直接株式を買うことはできないので、株式市場にマネーが入る仕組みの株価連動型上場投資信託(ETF)を年間で6兆円ほど購入できるようにしました。
 もう1つは、国民年金や厚生年金など公的年金積立金を株式市場に流入させることでした。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用枠は、積立金の12%から25%、金額にして33兆円へ倍増されました。
株式・国債・不動産バブルは、400兆円近くの内部留保金をこれらの市場で運用している大企業をはじめ、内外の大口投資家、富裕層に、値上がり益などの巨額の金融利得を与えてきました。
 でも、貯蓄を持たない3割の世帯や、その貯蓄を預貯金として保有する圧倒的多数の国民にとって、このようなバブル経済は、何の恩恵もなく、むしろ貧困格差の拡大をもたらすだけです。株価が暴落したら年金に莫大な損失が発生し、老後の生活が脅かされます。
 日銀が異次元金融緩和政策の微調整(「マイナス金利」の導入)を行うやいなや、民間銀行はいっせいに預貯金金利を0・02%から0・001%へ引き下げました。普通預金をしている個人の年間の利子の受取額は468億円から23・4億円に削減され、100万円の預金も、利子は10円になりました。
 民間金融機関は、個人の預貯金の利子を異常な低水準に押し下げておきながら、日銀に預けてある預金(日銀当座預金)には0・1%(個人の普通預金の100倍!)の利子を適用してもらい、日銀から毎年2000億円超の利子を受け取っています。これは、日銀からの利子という形の「公的な補助金」を受け取っているようなものです。
 バブルの恩恵とは無縁の一般家計の所得は激減する一方なのに、大企業と金融機関・大口投資家・富裕層の資産を厚遇する不公平な金融政策がまかり通っています。

日銀依存の国債発行と迫り来る危機

 異次元金融緩和政策の仕組みは、民間金融機関の保有する国債を日銀が大量に買い取り(国債買いオペレーション)、その買取代金を民間金融機関にジャブジャブ供給することでした。しかも、日銀は、国債を高めに買い取るので、買いオペのたびに民間金融機関は日銀からその差額に当たる国債売買差益を獲得し、リスクフリーの「日銀トレード」で利益を得てきました。
 2016年度の日銀の国債買いオペ額は、約120兆円に達し、国債の発行額(新規国債と借換債の合計)に匹敵する金額でした。
 現代日本の財政運営と国債発行は日銀の国債買いオペで供給されるマネーに全面的に依存していることになります。これは、さまざまな問題を引き起こしいます。
 第1に、国債発行の歯止めがなくなり、将来の租税で返済することになる政府債務(国債発行残高)が膨張しています。それは、ほぼ1000兆円になり、経済規模(GDP)の2倍を超え、終戦直後の水準に達しています。
 この巨額な政府債務をどう処理するのか、消費税増税や福祉の切り捨てで財源を確保するのか、それとも400兆円に達する内部留保金や対外金融資産など応能負担の原則で返済するのか、世界が注目しています。終戦直後は、国民の預貯金を封鎖し政府が取りあげ、さらにパイパーインフレを起こして政府債務が「返済」されました。
 第2に、1000兆円の政府債務の返済費用(国債の元利払い)は、すでに一般会計予算の4分の1に達し、国民生活に直結する予算を圧迫しています。予算編成にあたって最優先で配分されるのが、国債の元利払いだからです。この5年間で社会保障関連予算は3・4兆円ほども削減され、世界でもトップクラスの「貧困大国」に拍車をかけています。
第3に、日銀の保有する国債は、昨年12月末に410兆円となり、国債発行残高の4割近くに達しました。このままでは、2017年中に日銀の国債保有額は日本の経済規模を超えることになります。異常事態です。
 日銀マネーの異常な供給の上に成り立つ現代日本の国債市場や株式市場は、官製バブルの「砂上の楼閣」ですから、何らかのきっかけで日銀マネーの供給が滞ると、崩壊します。
 すでに、7割ほどの日本国債の利回りは、マイナス圏に入り、内外の投資家サイドからすれば、価格が高すぎ(利子は低すぎ)旨味のない投資物件になっています。日銀も、保有国債から受け取る利子が減り、また高値の国債買いオペを繰り返したので赤字に陥ってしまいました。内外の投資家がそっぽを向き、日銀マネーの供給も滞ると国債価格も株価も暴落します。円の対外的な信認も毀損し、円安が急展開します。
 国債価格の暴落と急激な円安は国民生活を直撃することになります。一般会計予算の国債利払い費が増大し、社会保障予算を奪い、国民生活のセーフティネットが破壊されます。国債金利の暴騰はこれに連動する住宅ローン金利を暴騰させ、ローン返済額が激増します。円安は、輸入する原材料費を暴騰させ、国内物価を押し上げ、国民生活に困難を強いることになります。
 2017年の国民生活にとって、最重要の課題は、暴走するアベノミクスと異次元金融緩和政策からの脱出にあるといえます。


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