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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

65. 2019年の経済潮流を読む

◎経済の潮流2019/上/袋小路の異次元緩和

アベノミクスは、内外の大企業・富裕層の利益を最優先し、株式、国債、都心不動産に官製バブルを発生させ、ぬれ手であわのバブル経済を膨張させました。他方で、消費税増税や年金と福祉切り捨てで国民の負担率を戦後最高の水準に引き上げました。国民生活を破壊してきた6年間といえます。

アベノミクスは、インフレを抑え込むはずの中央銀行(日銀)に2%のインフレを起こさせる逆立ちした政策であり、始めから矛盾を抱え込んでいました。仮に2%のインフレ目標が達成できたとしたら、国債金利も2%上げなければ国債が売れなくなり、財政資金の調達ができなくなります。国債金利を2%上げたら、利払い負担は、2020年度で7・3兆円増大し、国債の元本償還分も含めた一般会計の元利払い費は30兆円を超えます。予算の3割以上が過去の借金の支払いに消え、負担は年ごとに増え、財政は破綻します。

超低金利を実現してきた異次元金融緩和が出口に向かうと国債金利が上昇します。もはや引くに引けない袋小路に入っています。

 ●将来世代に負担

日銀の異次元金融緩和政策は国債の大規模買い入れから成り立っていました。国債発行額を上回る日銀の国債買い入れは、事実上、日銀引き受けで財政資金が調達される財政ファイナンスです。安倍政権下でほぼ260兆円の国債が増発され、19年度末の内国債発行残高は1000兆円を超えます。

将来の租税を先取りする借用証書の国債は、現世だけでなく将来世代の税負担を増大させます。他方で、政府が元利払いを保証する金融商品でもある国債は内外の投資家に莫大(ばくだい)な利益を与えてきました。

内外の金融機関や大口投資家の国債ビジネスは、日銀との国債売買に支えられています。

日銀は、2%のインフレ目標達成を錦の御旗に、緩和マネーを供給するため、どんな高値でも額面を上回る価格で国債を買い入れてきました。長期国債利回りがマイナス、つまり国債を買って持ち続けると損が出るほどの国債バブルを発生させました。1京円の売買が行われる国債ビジネスを主導するのは、財務省指定の20社ほどの内外の巨大金融機関からなる「国債市場特別参加者」です。

これらの金融機関や大口投資家は政府から安く仕入れた国債を日銀に高く売りつけ、莫大な差益を獲得してきました。彼らが日銀トレードで稼いだ国債売買差益は、昨年9月末までで11兆円に達し、日銀はその分の損失(国債償還損)を抱え込んでしまいました。

 ●官製相場が急落

昨年は株式バブルのミニ崩壊が続き、安倍政権下で初めて前年比マイナスの株安の年となりました。新年4日の大発会でも452円安となり、過去3番目の下げを記録しました。官製相場は調整局面に入り、内閣支持率も下がり始めています。

株価連動内閣とやゆされる安倍政権は、規則を変更し、日銀と公的年金積立金に70兆円ほどの国内株式を購入させ、官製の株式需要を創出し、政権維持のためにも株価をつり上げてきました。

日経平均株価は、6年前の1万円前後の水準から2倍以上も値上がりし、株式時価総額は300兆円台から600兆円台に増えました。株式を大量に保有する大企業・金融機関・内外の投資家・富裕層は株式の莫大な値上がり益を獲得しました。保有株の一部を売却することで利益を手にできました。

株式保有とは無縁の国民との資産格差は拡大し、社会は、持てる者と持たざる者とに分断されました。


(◎経済の潮流2019/下/崩壊するか官製バブル

2019年は世界も日本も大波乱に直面しそうです。リーマン・ショックから10年が過ぎ、欧米の金融引き締めが世界の金融市場の潮目を変え始めたからです。

世界の緩和マネーの先細りを読み込んだ各国の株式市場は、昨年、乱高下と同時株安を繰り返しました。アベノミクスがけん引した官製バブルの崩壊は、日本社会に異次元のリスクを表面化させるでしょう。

アメリカの情報サービス会社、ブルームバーグによれば、2018年のリターンは、債券(国債)、株式、商品など八つに分類した資産で5%を上回った資産は皆無でした。こんな事態は、1972年以来初めてだそうです。高いリターンを狙うヘッジファンドも解散に追い込まれています。5%のリターンとはあまりにも暴利と言えますが、少数者が暴利を独占する現代資本主義の限界が表面化してきたようです。

2014年に量的金融緩和の出口と正常化に向かったアメリカの中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は、15年以来政策金利を9回引き上げてきました。欧州中央銀行(ECB)も18年暮れに量的金融緩和の終了を宣言しました。世界の緩和マネーは縮小に転じ、株価が低迷するなど、世界の資産バブルを支えきれなくなってきました。

●成長率も低下へ

経済成長率も下がり始めました。国際通貨基金(IMF)は2019年の世界の経済成長率を3・9%から3・7%へ下方修正しました。トランプ政権が仕掛けた貿易戦争は世界の成長率を長期的に0・4%押し下げると予測しています。

日本の成長率は主要国で最低の0・9%です。しかも、日本貿易の4割近くを占める米中の間の貿易戦争は、10月に予定される10%の消費税増税と相まって、日本経済に深刻な影響をもたらします。政府が「戦後最長の景気回復」と宣言する裏で、不況と官製バブルの崩壊が忍び寄っているようです。

●国民生活に被害

国債バブルと株式バブルの崩壊は、アベノミクスが積み上げてきた異次元のリスクを表面化させ、巡り巡って国民生活に甚大な被害をもたらします。

一つは日銀の信用毀損(きそん)です。日銀は、国債の大規模買い入れによって緩和マネーを供給したため、18年末現在で471兆円、国債発行残高のほぼ半分を保有することになりました。

価格変動リスクのある国債や株式を日銀のように大量に保有する中央銀行は世界に例を見ません。国債バブルが崩壊したら、日銀に巨額の損失が発生します。「円」に対する内外の信用がなくなり、想定外の円安となるでしょう。大幅な円安は原油や食料などの輸入物価を暴騰させ、国内は物価高に襲われます。大企業は輸入物価を価格に転嫁できますが、中小企業の営業や国民生活は破壊されます。

 もう一つは公的年金積立金の損失です。安倍政権下で株式への運用枠を2倍以上に拡大された年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFは、18年9月末現在で内外の株式を87兆円も保有しました。165兆円の運用資産の半分以上がリスクの高い株式で保有されています。

リーマン・ショックでは、世界の株価がほぼ半値にまで暴落しました。このような株価暴落が発生すると、国民の財産である年金積立金は40数兆円を世界の株式市場で失ってしまいます。

中央銀行と国民の公的年金が株価対策と政権維持のために利用される事態は異常としか言いようがありません。

(この項おわり)

(了)



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