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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

63. アベノミクスが積み上げた負の遺産

 

 第2次安倍政権の経済政策(アベノミクス)が始動してから、6年目に入りました。この間、アベノミクスは、トップ1%の大手企業や金融機関、内外の投資家や富裕層には「わが世の春」を実現し、99%の国民には世界トップクラスの貧困と格差をもたらしました。そのうえ、現在だけでなく、近未来の日本の経済社会にも、計り知れない異次元の負の遺産を積み上げてきたようです。

「世界で一番企業が活躍しやすい国」めざす政権

 安倍総理の最初の施政方針演説(2013年第183回国会)は、「世界で一番企業が活躍しやすい国をめざす」でした。企業という組織に投票権はないのに、自分に清き一票を投じた有権者・国民のことを忘れた総理大臣の登場です。
 そもそも、「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」(憲法第99条)はずの国務大臣が、自ら憲法を変えるという逆立ちした認識を持つ総理大臣でした。国民主権や民主主義についての認識と見識を欠落させた首相が経済運営の手綱を握ったらどういうことになるか、アベノミクスに支配された現代日本は、多分トランプのアメリカも、その実験場にされてしまいました。
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」とは、利益追求を最優先する企業の活動を拘束するさまざま規制が緩和撤廃された国です。グローバルにビジネスを推進する巨大企業や金融機関は、国内経済を空洞化させながら、ビジネス拠点を海外に移し、国内ではリストラ、非正規雇用の拡大、長時間労働、賃金カットなどで、決算期毎に戦後最高の利益を報告しています。
 戦後最高の利益は、勤労国民の賃金に向けられず、まず株主の配当金の増額、経営者の報酬、446兆円に達する大企業の内部留保金として積み上がりました。他方で、主権者である国民の生活は深刻な消費不況に陥ったまま放置されてきました。財政運営では、法人税は減税されるが、消費税は増税され、社会保障費は削減されるが、大企業の利益に直結する大型公共事業や防衛費が増額されてきました。

消費不況下でもアベバブルで株価は2倍に上昇

 多くの国民は、メディアの報道する「戦後最長の景気」「戦後最高の利益」といった言葉に違和感を覚え、生活実感からすれば「不景気」であり、「生活は苦しくなっている」と感じています。
 実際、安倍政権発足時の2012年12月から18年8月にかけ、実質賃金年収は、391万2000円から376万9000円へ、14万3000円も減っています。賃金が減っているところに、安倍政権は2014年に消費税率を5%から8%へ引き上げましたから、国民の可処分所得は削減され、消費生活のための実質消費支出は年10万3000円も下落し、消費不況が深刻化しました。
 国民の生活実感は「苦しい」経済状態にあるのに、アベノミクスが始動すると、株価(日経平均株価)は、それまで1万円前後の水準から2万円超へ、2倍以上も上昇しました。株式を大量に保有する大手企業や金融機関、内外の投資家や富裕層は、安倍政権下で株式資産を2倍にすることができました。株式保有者は、「棚からぼた餅」の恩恵に預かりました。他方で、株式保有どころか銀行預金すらない貯蓄ゼロ世帯は3割に達しています。かつて「1億総中流」意識が支配した国は、今日では、「持てる者」と「持たざる者」に分断された「貧困・格差大国」へ転落してしまいました。
 値上がりした株式の一部を売却した売却益は、企業や金融機関では決算対策に利用され、好決算を演出し、投資家は新規の投資マネーを獲得し、富裕層は高額商品の購入に向けたようです。国民生活に直結する生活雑貨やスーパーの売上げは減っているのに、高級車・奢侈品・高級家具などの高額商品の売上げが増えた背景は、アベノミクスが主導した株高・アベバブルにありました。

「株価連動内閣」の株価つり上げ策

 株高・アベバブルは、日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、安倍政権の意向に沿って、大規模に株式を買い入れ、株式に対する人為的な需要を創出する株価つり上げ策によるものでした。
 日銀は、日銀マネーが大量に株式市場に投入できるように、年間6兆円に達する日銀のETF(株価指数連動型上場投資信託)買入を実施しました。株価が下落局面に入ると、日銀は1回につき700億円ほどの株式を買い入れ、株価を下支えしてきました。
さらに国民年金・厚生年金・共済年金など国民の公的年金160兆円ほどを管理するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2014年10月、内外の株式への運用割合をそれぞれ12%から25%へと倍増させ、巨額の年金積立金を株式市場に投入するようになりました。
 日銀とGPIFが株式市場に投入した公的資金は、2018年6月末現在、合計66兆5000億円にも達し、日本株の時価総額の1割を超えました。景気の良さを株高で演出する株価連動内閣の株価つり上げのため、世界でも例をみない日銀マネーと国民の公的年金積立金が利用される異常事態が発生しています。
 10年前のリーマン・ショックでは、世界の株価が半値にまで暴落したように、株式は大きな価格変動リスクのある金融商品ですから、株価が暴落すると、日銀とGPIFには、巨額の損失が発生します。日本円に対する信認は揺らぎ円安・物価高をもたらし、国民の年金生活は困難に陥ります。

異次元金融緩和と累積国債1000兆円

 お友達で脇を固める安倍政権は、日銀総裁に黒田東彦氏を抜擢し、異次元金融緩和政策を推進してきました。黒田日銀は、年間100兆円ほどの国債を買い入れ、じゃぶじゃぶの日銀マネーを民間金融機関に供給してきました。しかも、国債の買入価格は、民間金融機関が政府から買い入れた価格よりも高くしたので、民間金融機関は、日銀との国債取引で18年3月末までに10兆円ほどの利益を受け取ってきています。
 政府は、日銀の国債買入を当てにしてほぼ無制限に国債を増発してきました。その結果、国債発行残高は経済規模(GDP)の2倍の1000兆円にまでに積み上がり、世界でトップレベルの「政府債務大国」に転落しました。
 深刻化する財政赤字は、現役世代の負担だけでなく、将来世代にも過重な負担を強要しますが、このような国民に負担を転嫁するやり方の政府債務の返済プログラムではなく、負担できるところから負担してもらう(応能負担の原則)選択肢があります。財源は、大企業の内部留保金446兆円、富裕層122万世帯の金融資産277兆円、国内から海外に向かったジャパンマネーの対外純資産325兆円などです。元はと言えば、これらの金融資産は国債増発で実現した経済運営の果実を独り占めした結果です。






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