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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

57. 2018年の経済潮流を読み解く


膨らむバブルと崩壊リスク


 現在の世界経済は、各国の株価や債券価格などが実体経済の水準を超えて暴騰するバブル経済になっています。
 今年は、2008年のリーマン・ショックから10年になります。世界大恐慌に直面した各国の中央銀行は、この10年間、歴史的に未体験ゾーンとなる量的金融緩和(QE)政策を継続し、空前の資金供給を断行してきたからです。実体経済は、1・2倍しか増大していないのに、日米欧と中国の中央銀行は、資金供給量(マネタリーベース)をほぼ5倍に増大させました。リーマン・ショック前に4〜5%だった各国の政策金利は0%近傍にまで引き下げられました。

 ●実体経済の4倍に膨らんだ金融資産

 空前の「緩和マネー」は、世界の株式、債券などに投資され、バブル景気を演出する一方、金融資産総額が実体経済の規模、国内総生産(GDP)の4倍ほどに膨らんでいます。各国の大手企業、金融機関、投資家、富裕層は、バブルの恩恵を受け、利益や資産を急増させました。一般国民や中小企業との資産格差が拡大し、社会は摩擦を高めています。
 数十億円の報酬を受け取る米ウォール街の経営者、株式売却益で利益を増やす大企業、超富裕層8人の資産は低所得層の世界人口の半分=36億人の資産合計(4・26兆㌦=約480兆円)に匹敵するなど、世界中で資産や所得格差が拡大しています。深刻化する貧困問題は、欧米で続発するテロの経済的背景になっています。
 現代経済はグローバル化し、各国経済と市場は情報通信技術によって密接に結合しています。どこかでバブルが崩壊すると、瞬く間に世界中に波及します。最近のアメリカのバブルは10年前後の周期で膨張と崩壊を繰り返し、世界経済を混乱に陥れてきました。すでに各種の警告が発せられています。

 ●持続不可能な低金利状態

 第一に、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン元議長は、現在の日米欧主要国の長期金利は持続不可能なほど低金利(国債などの債券価格暴騰)であり、いずれ債券バブルが崩壊し、長期金利が上昇する、と警告しています。長期金利が上昇すれば、各国の国債利払い費は増大し、財政危機を誘発します。増税圧力が強まる一方で、社会保障予算などが削減されます。家計では住宅や自動車ローンの支払い費が増大し、生活破綻を誘発します。
 第二に、ウォール街のエコノミストは、2018年の金利上昇を予測しています。すでに欧米の中央銀行は、行き過ぎた金融緩和政策を正常に戻すための「出口戦略」を展開しています。政策金利を引き上げ、量的金融緩和の規模を縮小させてきました。「出口戦略」に言及しないのは日本銀行だけです。
 主要国の政策金利が0%近傍に張り付いているなか、アメリカの中央銀行(FRB)は、すでに昨年に3回、政策金利を引き上げ、今年も2~3回の利上げを予定しています。米金利は、上げ幅によっては、株式バブルの崩壊や新興国からの資金還流を誘発します。アメリカの株価(ダウ工業株平均)は、すでに史上最高値の2万5000㌦超を記録しており、バブル崩壊後の被害は、リーマン・ショック超えの事態も想定されます。
 第三に、「緩和マネー」は、値上がり益を求めて、内外の住宅市場や不動産にも流入し、バブルを発生させ、一生かかっても返済できないほどに住宅価格をつり上げています。上海の住宅価格はこの10年で6~10倍も暴騰しました。東京23区内の新築マンションの平均価格は5505万円になりました。住宅バブルの発生は、国民の生存権を脅かしています。
 バブル経済の犠牲者は、どの国のどの時代も一般国民や中小企業でした。

官製バブルと海外投資家


 世界のバブル経済のトップランナーがアベノミクスです。世界各国に先駆けて異次元の金融緩和に踏み出し、今なお「出口戦略」を語らないアベノミクスは、海外投資家の熱い視線を浴びてきました。
 日本銀行を政権の金庫のように利用するアベノミクスが始動してから今年は6年目になります。実体経済がさほど成長しない官製バブル景気にわき、日経平均株価が四半世紀ぶりに2万3000を超え、当初から2倍以上も上昇しました。
 しかし、安倍政権下の株高の背景に目をやると、無視できない問題に突き当たります。

 ●売買の7割が海外投資家

 第一に、「株式会社ニッポン」の最大株主は、安倍政権下で、大量の日本株を買い込んだ各種ファンドなどの海外投資家になりました。彼らの日本株の所有割合は最大の3割ほどに達し、株式売買高も7割近くを占めました。
 海外投資家の目的は、日本経済や企業のために資本金を供給することでなく、高い配当金と株式売買差益を追求することです。大株主になった海外投資家は、会社の経営方針を決定する株主総会で「物言う株主」として効率を最優先する経営を迫りました。
 日本政府・経団連も、このような効率的な経営を積極的に支援し、終身雇用の廃止、非正規雇用の拡大、賃金削減、リストラが加速しました。かつての「1億総中流社会」は分断、破壊され、「貧困・所得格差大国」に転落しました。
 第二に、海外投資家は、高頻度取引(HFT)で大量の日本株を売買するため、株価がトランポリンのように瞬時に乱高下するようになりました。株価重視の安倍政権は、株価を高めに維持するための仕組みを動員します。それは、日本銀行と国民の年金積立金に株式投資をさせることでした。
 海外投資家の株式の売り越しは、株価下落を誘発しますが、それを防止するために、日本銀行は株価連動型上場投資信託(ETF)を年間6兆円も買い入れ、日銀マネーをすでに18兆円ほど株式市場に流入させています。これにより日経平均株価は、3000円以上もかさ上げされているようです。さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式投資枠を拡大し、日本株に38兆円、外国証券に60兆円ほどが投資されています。
 何かの内外要因から、株価が暴落すると、日銀に損失が発生し、円の信用の毀損(きそん)=円安が発生し、国内物価を押し上げ、国民生活を破壊することになります。年金積立金にも損失が発生し、年金の支払いに支障が生じることになります。

 ●日銀が買い支える国債バブル

 それだけではありません。アベノミクスは、2%のインフレ目標を達成するとしています。このため日本銀行が年間100兆円を超える国債を買い取り、ジャブジャブの資金(マネタリーベス)を民間金融機関に供給してきました。日銀の大量買取りに支えられた国債価格は暴騰し、長期金利はゼロ%近傍に張り付く国債バブルが発生しています。
 日銀の供給したジャブジャブの資金は、政府の発行する新規国債に向けられ、国債発行の歯止めは無くなりました。中央銀行に依存した財政ファイナンスはいずれ破綻するので、海外は、その先頭を走る日本を「炭坑のカナリア」と見なしています。
 安倍政権は新年度分を含めると226兆円ほどの国債を大増発し、借金大魔王となり、国債発行残高は1000兆円を超えました。世界トップレベルの借金を抱えているのに、無駄な大型公共事業を復活させ、危険な軍事予算を増額させる安倍政権は、異次元の負の遺産を現在と将来世代に積み上げています。巨額の政府債務は、消費税などの増税圧力や社会保障予算の削減圧力になっています。

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