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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

54.経済政策の罪〜アベノミクスの異次元金融緩和政策〜


格差広げた株・不動産バブル


 安倍晋三政権は、自ら掲げた2%の物価目標も3%の経済成長率も、ことごとく挫折し、刀折れ矢尽き、衆議院を解散してしまいました。今回の総選挙は、安倍政権の政策(アベノミクス)に審判を下すことになります。
 そこで、アベノミクスの特徴と問題点を振り返りましょう。最大の特徴は、「異次元の金融緩和」政策です。日本銀行を安倍政権のいわば「金庫」として利用する政策でした。
 本来、中央銀行は、政権や業界から中立的であるべきですが、安倍首相は日銀総裁の人事に介入し、古くからのお友達の黒田東彦(はるひこ)氏を任命しました。さらに、金融政策を決定する日銀政策委員会のメンバーも順次入れ替え、アベノミクスの支持者を委員に送り込みました。
 黒田日銀は、年間100兆円を超える国債を金融機関から高値で買い取り、その買い取り代金のジャブジャブのマネーを金融機関に供給し続けました。一部は、手っ取り早いもうけ先として、株式市場や不動産市場に流入し、株式や不動産価格をつり上げました。

 ●株式資産は2倍
 このようなアベノミクスの異次元金融緩和政策は、次のような問題をもたらしました。
 第1に、ジャブジャブのマネーが株式バブルと不動産バブルを発生させ、経済格差を拡大したことです。1万円前後だった日経平均株価は、安倍政権下で2万円前後に上がりました。株式を大量に所有する金融機関、大企業、富裕層、投資家の株式資産は2倍近く増大しました。
 他方で、株式所有とは縁のない国民は蚊帳の外に置かれました。しかも実質賃金は削減され、消費税率は8%に引き上げられ、可処分所得が減り、生活はますます困難になりました。貧困率が世界トップレベルになり、貯蓄のない世帯が3割に達しました。

 ●政府債務大国に
 第2に、黒田日銀が大量の国債を買い取ってくれるので、安倍政権はほぼ無制限に国債を増発できました。5年弱の在任中に192兆円の国債が新たに発行されました。今年の6月末現在、国債などの政府債務残高は1079兆円に達しました。わが国は、国際比較すると、自国の国内総生産(GDP)の2倍以上の政府債務を抱える世界でトップレベルの「政府債務大国」に転落しました。
 他方で、国債は、これを購入した投資家(金融機関、企業、富裕層など)にとって、政府から定期的に利子を受け取り、元本を償還してもらえる格付の高い金融商品です。政府は、国債の投資家に、一般会計から毎年25兆円前後を支払っています。予算の中で国債の元利払いが増えると、それだけ社会保障や文教予算などがしわ寄せされます。
 第3に、国債を大量に買い取ってきたために、日銀は今年9月現在で432兆円の国債を抱えこんでしまいました。国債は株式と同じように価格が変動します。もし国債価格が暴落したら日銀の所有する国債に損失が発生し、日銀の財務が傷つき、日銀の信用は地に落ちます。「円」というマネーも信用されなくなります。
 このように、刀折れ矢尽きたアベノミクスが5年弱の任期中に残したのは、深刻な経済格差と異次元の負の遺産です。

国民を直撃する負の遺産


 現代日本の経済政策の基本は、本来、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」(第25条)を実現することにあります。しかし、安倍首相の最初の施政方針演説は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を実現することでした。アベノミクスはそのための政策でした。
 はじめからボタンを掛け違えた反国民的なアベノミクスは、5年弱の任期中に、次のような異次元の負の遺産を残し、衆議院を解散しました。

 ●バブル崩壊再び
 第1は、膨れあがった株式バブルや不動産バブルの崩壊のリスクです。28年前のバブル崩壊の悪夢がふたたびよみがえろうとしています。
 安倍政権下の実質経済成長率は、年平均でわずか1・1%ほどですから、高度経済成長期のように株価や不動産価格が華々しく上昇することはありえません。しかし、日経平均株価は200%も増大しました。明らかにバブルです。これは日銀や年金基金による株価の買い支えによるものです。日銀マネーは不動産市場にも流入しています。銀座の地価は過去最高になり、高い地点で1平方メートル当たり4000万円を超え、1980年代のバブル期を上回っています。
 このようなアベノミクスバブルの崩壊は、銀行の不良債権問題や企業の経営破綻、リストラと大失業など、日本経済と国民生活を直撃することになります。
 第2は、世界でトップレベルの「政府債務大国」に転落したことから発生する借金返済のリスクです。
 国債は政府の借金です。アベノミクスは、過年度分を含めて、今後返済しなければならない政府債務を1079兆円も残しました。問題は、返済のための資金をどこから調達するか、です。一つは、税負担能力に応じて租税を賦課する応能負担のやり方です。それは、400兆円に達する大企業の内部留保金や富裕層の金融資産などから返済資金を調達することです。
 もう一つは、消費税率を10%、さらに15%と引き上げたり、戦後直後にしたように、預金を封鎖したり、インフレを起こして債務を「返済」したりするやり方です。これは、国民に借金のツケを回すやり方ですので、国民生活が破壊されてしまいます。

 ●信用損なう日銀
 第3は、日銀信用が毀損(きそん)されることで発生するリスクです。国際社会からの信用を失った「円」は大量に売却され、急激な円安が発生します。食料や原材料の輸入物価は高騰し、それが国内物価を押し上げ、物価高が国民生活を直撃することになります。日銀信用の毀損の引き金は、国債価格の暴落(=長期金利暴騰)でしょうから、これは国債利払い費や住宅ローン金利の高騰となって財政や家計の負担を増大させることになります。
 安倍政権が残していった異次元の負の遺産について、最後に指摘しておくべきは、この政権下で「戦争する国」になったことのリスクです。
 一般会計予算で軍事費がとうとう5兆円を超え、国民生活に関連した予算を圧迫しています。このリスクが他の経済リスクとちがうのは、人命を直撃するリスクであることです。一刻も早い安保法制の廃止と積極的な平和外交がもとめられています。

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