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HP New face 3.jpg第2版:99%のための経済学入門.jpg  ようこそ、Netizen越風山房へ。ここは、わたしたち99%の平穏な暮らしをエンジョイするための情報発信サイトです。世界第3位の「経済大国」の豊かさはなぜ実感できないのでしょうか。株価と円・ドル相場・1000兆円の累積国債に振り回される経済から脱出しましょう。We are the 99% !! 1人1人が主権者です。この国のあり方は私たちが決めましょう。

62. 不安定さ増す金融市場



 同時株安の背景にバブル経済

 10月第2週に世界同時株安が発生し、翌週から乱高下を繰り返しています。近年、世界の株式市場で連動しながら乱高下する株価の動向は、一過性のものでなく、その背景は、現代の寄生的・腐朽的なバブル経済にあるようです。
 1990年代からほぼ10年前後の周期で、日本株バブルの崩壊、アメリカのIT(情報技術)バブル崩壊、住宅バブル崩壊とリーマン・ショック|と続きました。そして歴史上最高値に達したアメリカの株価を前に、「トランプ・バブル」の崩壊が予測されています。
 額に汗して社会に有用な財やサービスを生産するのではなく、目前の金銭的利益だけを追求するバブル経済は、膨張によって、大企業・金融機関・投資家・富裕層など1%の「持てる者」の資産を拡大しました。崩壊によって99%の「持たざる者」の生計を破壊し、貧困と格差を拡大してきました。

●あふれるマネー

 アメリカのダウ平均株価や日本の日経平均株価のような巨大株式市場の株価が短時間で大きく乱高下するのは、株式投資に運用されている世界のマネーがそれだけ巨額だからです。
 米欧、日本、中国の中央銀行は、リーマン・ショック対策で一斉に大規模な量的金融緩和(QE)に踏みだし、この10年間で約5倍の緩和マネーを供給してきました。しかし、世界全体の国内総生産(GDP)は1・2倍しか増えていないので、余剰な緩和マネーは目前の利益を求め、世界中の株式、債券、通貨、不動産、原油などへ投機的に運用されてきました。
 株価がトランポリンのように短時間で乱高下するのは、巨額の売買が1秒間に1000回から1万回の超高速取引(HFT)で行われ、日米の株式・債券市場で60~70%のシェアを占めるに至ったからです。市場はコンピューター・プログラムに主導され、飽くことなく利益を追求する野蛮な資本の論理が貫かれます。相場は乱高下し、世界の金融市場は不安定化します。
 あふれかえる緩和マネーは、もちろん利益が期待できれば世界中の実体経済に流入していましたから、欧米や新興国、特にアメリカでは、バブル景気とインフレ懸念が表面化してきました。

●米利上げで転機

 このような事態を前に、欧米の中央銀行は行きすぎた金融緩和政策からの出口を模索し、量的緩和を縮小したり、政策金利を引き上げたりしてきました。
 今回の世界同時株安を誘発し、新興国から米国へマネーを還流させたきっかけは最近の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げでした。金利が上がれば、リスクの高い株式や新興国投資からマネーを引き揚げ、より安全な国の銀行預金や国債などへ移し替えます。そこで安定した利益が追求されるからです。
 世界株安の被害は投資家だけに限定されません。各国の金融危機や経済不安を誘発してきました。マネーが流出した新興国では、経済停滞と通貨安を誘発し、深刻な被害が発生します。
 そのうえ、「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ政権による米中貿易戦争は、世界経済の足を引っ張っています。経済協力開発機構(OECD)によれば、関税で貿易コストが10%上昇すると、世界のGDPを1・4%押し下げるようです。世界の景気は冷え込み、高い関税は、国家には税収をもたらしますが、課税分を転嫁された高い商品を買わされる各国の国民には生活苦をもたらします。

 アベノミクスで異次元リスク

 世界は、リーマン・ショック後の緩和マネーによるバブル景気の転換期を迎えているようです。日本とて例外ではありません。むしろ、異次元金融緩和に暴走し、出口すら示そうとしない「アベノミクス・バブル」の崩壊は、予測不能の異次元リスクとなって日本の経済社会にのしかかっているようです。
 政権の掲げる目標はことごとく失敗してきましたが、大手の企業や金融機関、投資家、富裕層が期待する株価だけ大幅につり上げたのがアベノミクス(安倍政権の経済政策)です。
 第2次安倍政権誕生前の2012年の日経平均株価は1万円前後で推移していましたが、18年現在では2万円を大幅に超過しました。つまり、安倍政権下で株価は2倍以上も高くなりました。
 しかし、肝心の経済は横ばいのままです。国内総生産(GDP)は499兆円から537兆円へ、1・07倍しか増えていません。賃金カットと消費税増税など、消費不況に起因する長期的な経済停滞が放置されたままです。
 株価を2倍以上につり上げたアベノミクスの恩恵は、株式を金融資産として保有する大企業、金融機関、投資家、富裕層に集中しました。値上がりした保有株の一部を売却した利益は、決算対策に利用され、新規の投資マネーに組み込まれました。また、高額商品の購入に向けられ、格差はさらに拡大しました。

●株式を買い支え

 「株価連動内閣」とやゆされる第2次安倍政権は、株価をつり上げ、高値を維持するため、株価対策を実施してきました。
 それは、日本銀行と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式を買わせることでした。株高のカラクリはここにあります。
 アベノミクスの「第1の矢」である「異次元」金融緩和は、量的緩和(QE)と質的緩和からなります。質的緩和とは日銀に株を買わせることであり、世界の中央銀行が避けてきたことです。日銀は、株価連動型上場投資信託(ETF)を現在、年間6兆円も買い、日本株の4%にあたる約25兆円の株式を保有しています。
 また厚労省所管のGPIFは、内外の株式への運用枠をそれぞれ12%から25%へ2倍以上拡大しました。約161兆円の世界最大の年金資産を運用するGPIFは、市場関係者から「クジラ」と呼ばれ、国内株を41兆円、約2300銘柄を保有し、東証1部上場企業の多くで大株主になっています。
 安倍政権下の株高は、日銀とGPIFの2頭の「クジラ」が合計約66兆円、株式時価総額の10%を超える株式を買い支えた官製相場といえます。

 ●日銀・年金を直撃

 株価が下降局面に入ると、株価を維持するため2頭のクジラは、巨額の株を買い入れ、人為的な株式需要をつくりだしてきました。
 すでに日銀は量的緩和のため買い入れた国債を約450兆円保有していますが、国債よりリスクの高い株式をさらに約25兆円追加してしまいました。国債や株式価格が下落すると、日銀には巨額の損失が発生し、日銀信用は毀損(きそん)し、急激な円安やインフレが日本経済を襲うことになります。
 またGPIFが買い入れている株式は、国内株だけではありません。バブル景気に沸く米IT(情報技術)大手企業(GAFA=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の関連株式なども約40兆円保有しています。内外の株価下落は年金積立金を直撃します。10%の株価下落だけで、8兆~10兆円の損失をもたらし、年金という生活資金が株式市場の泡となって消滅します。




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